相続が発生したら、長男名義にしておけば大丈夫!
という認識のもとで、相続登記を済ましてしまうと
思いがけない悩みが発生してしまいます。
その一例をご紹介です。
右の家系図を参考にします。
1.夫が亡くなり、夫名義だった自宅を長男名義にした。
(奥様の名義にしてもいずれまた相続の手続きをする可能性
が高いことを考慮した結果)
2.長男名義にした自宅には、奥様のみが住んでいる。
3.長男には子供がおらず、万一、長男が奥様より先に亡くなった場合、
土地と家の名義はどうなる?
といった質問を受けました。
このケースで長男が亡くなると、相続分は
奥様 3分の1、
長男の妻 3分の2
です。
長男に他に財産が無い場合、下の選択肢を選ぶことになります。
A.自宅を奥様と長男の妻とで共有する
B.長男の妻が手を引く
C.奥様が長男の妻の相続分を買い取る
A.自宅を奥様と長男の妻とで共有する
の場合、長男の妻はこの家に住む気がなければ、
売ってお金に換えたいと思うのが通常でしょう。
しかし、奥様は売ってしまうと住むところがなくなってしまいます。
結果、長男の妻から、相続分を買い取ってほしいとの要望を受けお金を支払うか、
自宅を売って奥様は新しい住居を探すか、という選択をすることになります。
B.長男の妻が手を引く
の場合、奥様にとっては一番望ましい結果といえますが、
子供のいない長男の妻が、どこまで奥様に気をつかってくれるかは
甚だ疑問です。
C.奥様が長男の妻の相続分を買い取る
の場合、奥様に買い取れるだけの財産があればよいですが、
無い場合は、先ほどのA.のように、自宅を売って新しい住居を探す必要性がでてきます。
当然、奥様の目線で言えば、Bが望ましいですが、
そうもいかないケースは多いです。
さらに、長男が遺言で家を奥様名義に指定したとしても、
遺留分の請求により長男の妻へ金銭の支払いをする必要があります。
奥様名義にした場合ですと、奥様が亡くなった場合、
また相続手続きが必要というデメリットは確かに存在します。
ただ、長男名義にした場合、相続手続きを減らせる可能性があるという
メリットも存在する一方で、上記のようなデメリットも存在します。
安易に長男名義にしてしまうのは、非常に危険です。
この方法が絶対に正解というものはありません。
ご家族の状況、奥様の財産状況、長男の財産状況、今後の見通し等
総合的に検討した上で、手続きを進めていきましょう。
司法書士 岩井保寛