生産緑地指定解除後の所有権移転(売買・贈与等)の登録免許税についての記事です。
これは、私の体験を交えたお話になります。
結論として、
生産緑地の固定資産税評価額に従って登録免許税の計算をすると
結果的に100万単位での登録免許税の追加納付が発生する危険性があります。
なぜかというと
生産緑地(生産緑地の概念については割愛)として指定されている土地は
固定資産税がかなり優遇されています。
よって生産緑地の【指定解除後】の所有権移転ということは、
上記優遇制度がなくなった土地として登録免許税の処理しなければならないからです。
おそらく生産緑地の固定資産税評価証明書で登録免許税を計算すると
「数百㎡の土地なのに数千円の納付!?」
という金額がはじきだされます。
非常に低額です。
低額と思う感覚は人それぞれなので何の参考にもなりませんが、
一般的な田や畑の免許税よりもずっと低額です。
私の場合は、
「何百㎡も土地があるのに、登録免許税が1万円以下・・・」
といったものでした。
感覚的なお話をいくらしても意味がないので、ここで注意点を列挙します。
① 登記簿や、固定資産税評価証明書には生産緑地である旨の記載はない。
(ひょっとしたら記載のある自治体もあるかもしれません)
② 売買契約書の中に、「生産緑地の指定を解除した上で、引き渡す」等の文言がある
③ 登録免許税が驚くほど安い
④ 管轄法務局によって取り扱いが異なる
1つずつ見ていきます。
① 登記簿や、固定資産税評価証明書には生産緑地である旨の記載はない。
について。
生産緑地を匂わせる記載は上記書類のどこにもありませんでした。
強いて言えば、固定資産税が非常に廉価だなということぐらい。
登記地目や課税地目は 田 や 畑 になっているかと思います。
② 売買契約書の中に、「生産緑地の指定を解除した上で、引き渡す」等の文言がある
初見では、「なんだろうな」というレベルでしか捉えていませんでしたが、
この一文が非常に重要でした。
これを見落とせば、登録免許税の追加納付一直線の可能性大です。
ただ、必ず売買契約書に記載があるかというと作成する業者さん次第なところがあるかもしれません。
記載がないから安心というわけにはいかないでしょう。
③ 登録免許税が驚くほど安い
先ほどお伝えしたとおり、登録免許税が安すぎることに驚きます。
結局最後は感覚的な話になってしまうのですが、これにつきます。
売買契約書に生産緑地に関する記載もなく、免許税にも違和感を感じなければ、
正直お手上げです。
どうしても心配ということであれば、
当事者か税務署に生産緑地として指定されている土地かどうかの確認
をするしかないでしょう。
④ 管轄法務局によって取り扱いが異なる
名古屋法務局管内では、
生産緑地指定解除後の所有権移転に関しては、近傍宅地等の課税にて
免許税を算出する取り扱いになっています。
別の県では、生産緑地の評価証明書のままで登記可能な取り扱いとなっている話を耳にします。
少なくとも名古屋法務局管内はご注意ください。
以上、注意点を挙げました。
④でさらっと書きましたが、
生産緑地指定解除後の登録免許税は、近傍宅地等の評価を基準とします。
近傍農地等であれば被害もまだ少ないのでしょうが、
数百㎡の宅地の評価額となると登録免許税は跳ね上がります。
(近傍宅地等の指定方法については、法務局にて指定してもらい、
税務署等で評価証明書の交付を受ければOKです。)
お客様に対し、お取引数日後、
100万円免許税が足りませんでしたとは到底言えないでしょう。
一方で、売買契約前に登記見積の依頼を受けた場合も気をつけないといけません。
この場合は、登録免許税額の安さに違和感を覚えることができるかどうかです。
昨年に、この件に関してどうしても注意喚起したいということで、
名古屋東支部研修内で、情報共有を半ば強引に進めました。
正直、金額的に取り返しのつかない事態も十分想定されます。
司法書士会員のみなさんの参考になれば幸いです。