住宅購入資金について金融機関から融資(住宅ローン)を受け、同時に抵当権を設定する際、
所定の要件を満たせば、住宅用家屋証明書を取得することができます。
これにより、
所有権移転(保存)および抵当権の登録免許税が安くなることは、
司法書士業界では常識です。
今回の内容は、
「所有権移転登記の日から 数か月後 に抵当権設定登記をする」
といった事案です。
後日抵当権を設定する際に添付する、住宅用家屋証明書はいつのもの?
住宅用家屋証明書は所有権移転登記時に使用したもので問題ない
我々の典型的な業務として、
所有権移転と同時に抵当権を設定する際は住宅用家屋証明書1枚を取得し
所有権移転と、抵当権設定の両方について減税の適用をする場面が多いです。
ところが、今回は、リフォーム等の事情により所有権移転登記を終わらせた後、
数か月後に抵当権を設定するものです。
抵当権設定時に添付する住宅用家屋証明書は
所有権移転時に発行し原本還付したものか、新たに再取得する必要があるのか検討を要しました。
結論としては、所有権移転時の住宅用家屋証明書を添付すればOK。
再取得の必要はありません。
住宅用家屋証明書の再取得が不要となると一点、気になることがあります。
それは、住宅ローン用ではない抵当権設定にも虚偽の申請により、
住宅用家屋証明による減税が適用されてしまうおそれがあるのではないか、という点です。
たとえば、時系列として
① 住宅用家屋証明減税適用のある家を自己資金で購入し、
住宅用家屋証明書を発行して名義を変更した
② 先ほどの家を担保として、住宅購入とは全く関係のない借入をする
③ ①で取得した家屋証明書を②の抵当権の申請時に添付
その結果、住宅ローンではないのに家屋証明書による減税がなされてしまう、
という事態がありえる。
この流れを受けると、抵当権設定が後日となる場合は、住宅用家屋証明書を
再取得する必要があるのではないかという気になります。
これを解決するものとして、
「東京法務局の論説
租税特別措置法第74条の適用証明書の取扱いについての一考察
(登記研究459号)」が判断の道しるべとなりました。
法務局としての取扱いの傾向
上記「東京法務局の論説
租税特別措置法第74条の適用証明書の取扱いについての一考察
(登記研究459号)」のなかで、
登記官は積極的に調査をする必要はなく、登記申請書およびその添付書面上から見て、
住宅購入資金の貸付債権を担保するための抵当権ではないことが明らかな場合以外は
貸付債権を担保するための抵当権と判断して差し支えない、としています。
明らかな場合とは、登記原因証明情報に「土地購入資金」、「事業資金」の貸付と書いあるとか、
設定する担保権が根抵当権などの場合を指しています。
続けて、
登記官は、一般的には、法に反して不正に税の軽減措置を受けようとする者に対しては、
これを防止すべきであると言えるが、租税特別措置法による軽減措置は申請人からの申し出に
よりはじめて受けられるいわゆる申告主義を採り、一方で登記官の審査権限は書面審査主義に
よるのであるから、申請人から、法に適合するものとして法令の手続きに従い減税申告(登記申請)
されたものについては、提出された申請書およびその添付書面上から判断して、法に適合しないことが
明らかな場合以外は、これを法に適するものとして処理するのが相当と考えられる。
としています。
まとめ
法務局の姿勢としては、消極的な判断がなされることから、内容に矛盾がなければ
問題なく減税手続きを受け付けてもらえるということでした。
住宅用家屋証明書は必ず原本還付しておきましょう。